あれ〜 これはシミではありませんよ〜〜〜!!

とある受付時のお話

このブラウスシミがあるの
キレイにしてもらえる?

お客様

いらっしゃいませ
ちょっと見せていただけますか

受付

ドクター
衣類についたシミについて少し考えてみましょう!!

 

  シミってなんでしょう?

基本的には衣類についた余分なものを『汚れ』と言います。
例えば「食べこぼし」や「汗」、「カビ」などですね。

汚れの中でも洗うことでは落とせないような強固についたものが『シミ』と言われるのです。

シミを落とすと言うことは、衣類に加算された汚れを洗たくで引き算することです。
全てが引き算で済めば良いのですが引き算ではダメなものがあることも知ってください。

 

では、ちょっとブラウスを見てみましょうか?

色んな汚れがついているようですね。

脇には汗ジミがあるようですし
身頃には食べこぼしや飲み物がこぼれているようです。

袖にはこげ茶のシミがあります。
これは色から考えると「カビ」かもしれません。

 

シミ衣類
         

 

地色が薄くなっている脇や袖の汗ジミは、実は地色の染料が壊れている(引き算されている)場合があります。
このような場合には、元の染料が引き算されているので
それからもっと引き算しても決して元の状態には戻らないということはお判りいただけるでしょう?

   (10)あったものが(2)引かれて(8)になってるものをどんなに引き算しても(10)には戻りませんよね。

同じようにカビがある場合にも、カビが染料や繊維を栄養源として食べている場合もありますので
カビを落としたら、色が抜けてたり繊維が傷んでいることも良くあるんです。

   カビの場合には、引き算されたところにカビが作る色素が足し算されていますが
カビの除去(引き算)しても、染料が引き算されたものは元には戻りません。

このような場合には、汚れを落としても落ちている色は元には戻りませんのであしからず。
色を戻すには、シミ抜きではなく染色補正と言う技術が別に必要となります。
この技術はどこでも出来るものではないし、確実に新品の時の状態に戻るものではないこともご理解ください。


また最近は染料が変化してますし、飲料水もクエン酸やアミノ酸を含んだものなど増えています。
これらによって、染料が思わぬ色に変化することもあるんですよ。
酸やアルカリによって色が変化することがあるのですが、変化してすぐだと
酸での変色ならアルカリで、アルカリでの変色なら酸で元の色に戻るのですが
放置しておくと元の色に戻らない場合もあります。

汚れもついただけなら引き算でキレイにできますが
汚れが染料や繊維にまで悪影響(引き算)を与えていると後が大変 ・・・

 だから早く処置する必要があるんです。

それと何でも『シミ抜き』できるとは思われないように
余分に付着したものは除去できることも多いのですが

   例えば、白い綿素材の生地に汗ジミが出て黄色くなったものなどは漂白である程度落とすことも可能でしょう。

色柄が薄くなったものや紺色の一部が赤っぽくなったものなどは
染料の一部が壊れている可能性があるのでシミ抜きでは元には戻りません。

 

変退色

例えば真ん中の色が違う部分は青色が壊れた状態です。
紺色は青と赤を混ぜて作られますが
青色は汗や紫外線などで比較的壊れやすく
壊れた部分が少し赤っぽく見えます。

 

 

このように単純にシミとは言えないものがあることを判っていただけたでしょうか。

実をいうと、受付の時には『シミ』と『脱色』や『変色』を判断することは難しい場合もあります。
お預かりして作業してみてからはじめて判る場合もあるんです。

クリーニング店では作業を続けると脱色につながると思えば、それ以上の処理を中断する場合もあります。
漂白処理で落とせる場合でも、繊維に悪影響を与えると判断すれば処理を行いません。

どこまでの処理が出来るのかは、お店の考え方や技術力によって異なります。
どのお店でも一律の作業を行うものではないこともご理解ください。